薄毛・脱毛症(アロペチア)の再生医療

私はみなと芝クリニックにおいて、長年皮膚科診療に携わってきましたが、殊、脱毛・薄毛症に対する従来の保険診療では満足のいく結果が得られなかった感がありました。近年、男性型脱毛症(AGA)に対するノウハウが確立されてきて、脱毛・薄毛症が改善する患者さんが増えてきています。しかしながら、未だにAGAに対する薬物治療でも十分効果があがらず、悩まれている患者さんは大勢いるのも事実です。最近はそのような患者さんも含め、脱毛・薄毛症治療に再生医療が応用されるようになり、効果が期待できる報告がなされています。当院でも長年の経験と知識をもとに、あらゆる脱毛・薄毛症を対象にした再生医療を行なっております。特に当院では女性型脱毛症、AGA不応性脱毛症、円形脱毛症、抗がん剤や放射線治療後の脱毛症に力を入れています。

一本の髪の毛が生えて、抜け落ちるまでの期間を毛周期といいます。その期間は4~6年と言われています。毛周期は髪が伸びていく成長期が2~6年、成長が止まる退行期が2~3週、成長が完全に停止し、抜けやすくなる休止期が2~3か月です。毛周期が1周するのに最短で約2年かかるとしますと、毛母細胞はその一生の間に50回分裂できますので、2年X50=100年は維持されることになります。しかし、たとえば男性型脱毛症(AGA: Androgenetic Alopecia)では毛周期が0.5~1年と短縮してしまいますので、25~50年で毛母細胞の分裂は止まり、髪が抜けてしまいます。従って、分裂が止まってからでは手遅れとなりますので、そうなる前から脱毛対策は必要なのです。

脱毛の種類

円形脱毛症

免疫の異常(一種の自己免疫性疾患)が関係しているといわれる「円形脱毛症」では、毛母細胞は免疫反応により炎症が惹起され障害を受けますが、毛の幹細胞は生きています。従って、円形脱毛症の治療の主体は異常な免疫反応を抑え、炎症を起こさせないようにすることで、毛髪は再生することが可能となります。

女性型脱毛症(女性男性型脱毛症)

女性男性型脱毛症は、体内のホルモンの影響により髪が薄くなる女性の薄毛の症状の1つです。体内の男性ホルモンであるテストステロンが変性し、ジヒドロテストステロン(DHT)になると、本来は毛髪の成長をうながすはずの毛母細胞に「毛の成長を止めろ」という誤った指令を出してしまいます。その結果、びまん性に頭皮全体の毛髪が抜けてしまうのです。
加齢やストレスなどの影響で女性ホルモン量が減少することで、相対的に男性ホルモンの影響を受けやすくなる40代から更年期以降の女性に発症が多くなる傾向があります。DHTのレセプターの有無は遺伝的な要因も原因と考えられており、母から娘に遺伝することがあります。その他、甲状腺機能低下症、鉄欠乏性貧血、膠原病や極端なダイエットが原因でなる場合もあります。

FAGA(女性男性型脱毛症)の脱毛進行パターン

急性休止期脱毛症

薬剤や外傷、ストレスなどによって、成長期の毛髪の発育が抑制され、休止期の毛髪が増えることによって起こる脱毛。これらの病因にさらされてから2~4か月後に脱毛が始まります。脱毛は数か月続くと言われています。

慢性休止期脱毛症

原因不明の30~60歳の女性に多くみられる脱毛症で、数年間持続すると言われています。

成長期脱毛症

抗がん剤や放射線治療の副作用で成長期の毛母細胞の増殖が抑えられ、10日くらいして一気に毛が抜け落ちます。成長期の毛髪は全体の90%近くを占めているので、無毛に近い状態に陥ってしまいます。治療が終了してから1年もすると毛髪は生えてきますが、全体に薄毛であったり、毛髪が細くなってしまうことがあります。原因は異なりますが、前述の円形脱毛症も成長期脱毛の一種と考えられています。
このように脱毛・薄毛の原因は上記のようにいろいろと言われていますが、加齢性変化を除けば、毛髪の元となる毛母細胞の周辺の血流不足、毛母細胞への栄養不足、毛母細胞の増殖の低下とアポトーシス(自然死)の亢進による成長期の短縮に要約されます。このような状況を引き出すきっかけが、抗がん剤であり、放射線照射であり、男性ホルモンの感受性であり、免疫能の異常であったりするのです。すなわち、毛母細胞、及びその周辺環境を良くすることにより、あらゆる脱毛・薄毛症も改善する可能性があります。再生医療はサイトカインに含まれる血管を新生する物質が毛母細胞周辺の血流を改善し、細胞増殖因子が毛母細胞を増やし、抗炎症性物質が炎症を抑えて、毛母細胞の自然死を減らし、免疫の異常反応を抑えて毛母細胞を守ります。そして分裂を休止している毛母細胞にスイッチが入り、新しい毛髪を形成します。これに今までの脱毛・薄毛症治療を継続併用することにより、相乗効果が期待されます。諦めかけてあなたに生命の力を与える、それが再生医療なのです

当院の治療プロトコール

当クリニックでは、自由診療にて、高濃度ビタミンC療法を行っています。ぜひ一度お試しください。
高濃度ビタミンC療法は、次のような症状に効果が期待できます。症状、治療内容によって、ビタミンCの1回の投与量、回数は変わります。
当クリニックで使用している高濃度ビタミンCは、酸化防止剤を不使用です。米国メリット社製より、正規代理店を通して輸入しているため、品質に関してもご安心いただけます。

1脱毛部位への脂肪幹細胞培養上清液の水光注射

  • 脱毛治療における水光注射とは毛母細胞のある皮下脂肪組織の浅い層に直接極細の針を用いて、毛髪の発育を促す増殖因子や過剰な免疫反応を抑制するサイトカインを注入する方法です。1か月毎に一回注入し、最大6か月経過観察します。副作用、副反応として上清液に対するアレルギー反応や、注入部位の内出血、腫れ、痛み、硬結などが報告されています。ただし、それらの程度は表れても軽微であることがほとんどで、3日から1週間程度で収束します。
  • 2ミノキシジル外用薬の塗布

  • 毛母細胞の活性化と血流促進作用があります。男性用(ミノキシジル濃度5%)と女性用(1%)でミノキシジルの濃度に差があります。女性の場合、濃度を濃くしても発毛に有意差がなく、副作用が強くなる臨床試験の結果に基づいてます。使用方法は1日2回、塗布します。副作用としては、かぶれが最も多く報告されています。その他に動悸、むくみ、初期脱毛、多毛症などがありますが、いずれも可逆性で、重篤な副作用の報告もありません。
  • 3内服療法

  • 男性型脱毛症や休止期脱毛症(円形脱毛症にも)に適応があります。当院ではミノキシジル、フィナステリド、デュタステリド(男性のみ)、ビタミンB群(B2,B6、ビオチン、パントテン酸など)、ビタミンC、葉酸、ビタミンA及びE、カルニチン、アミノ酸(シスチンなど)、亜鉛をカクテルした製剤を内服していただきます。最低6か月は内服を継続していただきます。 ミノキシジルの副作用に動悸、むくみ、初期脱毛、多毛症などがありますが、いずれも重篤な副作用の報告はありません。フィナステリドは性欲減退などの性機能障害が報告されていますが、発現率は1~3%で重篤なものではないとされています。 デュタステリドもフィナステリド同様の副作用がありますが、その頻度はやや高いようです。
  • 4シャンプー

  • 脂漏性皮膚炎を合併している脱毛症に対しては、ケトコナゾールを含む洗髪剤が有用であります。脂漏性皮膚炎の原因菌であるマラセチアを抑えることにより、炎症を抑え毛髪の発育環境を改善します。当院ではカダソンスカルプシャンプーを提供しています。副作用としてはアレルギーによるかゆみが考えられます。一方、内服薬のケトコナゾールは高容量で男性ホルモンを抑える作用を示しますが、肝機能障害の副作用の点で当院では推奨しておりません。
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