手術せず切らないで治す変形性膝関節症
厚生労働省では、国内での変形性膝関節症患者数を、自覚症状を有する患者数で約1000万人、潜在的な患者数(X線診断による患者数)で約3000万人と推定しています。発病率は高齢になるほど上がり、患者数は65歳以上では55%と報告されています。男女比(患者割合)では、女性のほうが男性よりも1.5倍~2倍多いことがわかっています。患者さんのほとんどは初期に痛み止めと湿布、大腿二頭筋の筋肉トレーニングによるリハビリテーションが施されます。更に進行して、階段を降りるときの痛みが強くなったり、正座が困難になったりするとヒアルロン酸の関節腔内注射の適応になります。週一回で、5週連続注射して効果を見ます。ヒアルロン酸は関節内の摩擦を減らし、軟骨の損傷を防ぐ作用により、痛みを一時的に軽減します。若年者で軽症の方は、軟骨が再生してきて治る方もいますが、大半は再発を繰り返し進行していくことが多く、最終的には人工関節置換術という手術治療になります。
人工関節の耐用年数は15年程度と言われていますので、平均寿命を考慮しますと、70から75歳あたりで手術すれば、再手術の必要性は少なくなると思います。しかし、60歳代で手術をしてしまうと、もう一度手術をする必要性が出て2回目の手術を70歳台でするのはかなりきついと思われます。ヒアルロン酸注射を繰り返ししても効果が薄れてきて、さあどうするといった時に、手術まで時間稼ぎする方法があります。それがサイトカインを利用した治療法です。自家血を用いた方法、自家脂肪幹細胞を用いた方法、他家のものを用いた方法があります。1番目が当院HPにも掲げたPFC-FD療法、2番目が幹細胞を用いた再生医療、3番目が幹細胞培養上清液を用いた治療です。いずれも一長一短がありますが、どれもサイトカインの作用により炎症を抑え、組織修復を促すことで痛みや動きを改善するものです。効果は個人差があるものの、半年から1年は有効とされています。場合によっては、効果が持続する方もいます。手術を受けたいが今はできないとか、手術そのものがいやだという方への一つの有益な選択肢になるものと確信します。
犀星の杜クリニック六本木