整形外科の診療を行なっていますと肩の痛みを訴える方が大変多いです。50~60歳代の方の痛みは五十型と診断されることが多いですが、特に男性で、受傷機転が不明な場合、腱板損傷(断裂)が原因であることがほとんどです。そもそも、肩の腱板とは何なのでしょうか。肩の関節を支えている筋群の、上腕骨骨頭部に付着している腱の部分をいいます。この筋群は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋を指します。50~60歳になると、加齢性変化で腱組織が脆くなってきて、ちょっとした外力がかかるだけで腱板は損傷してしまいます。従って、本人は心当たりがないというのです。原因が原因だけに、これといった予防法がありませんので、何に注意したらよいかというアドバイスもできません。また、放置しておいたら自然に治るものでもありません。そこが五十型と違うところでもありますそのまま放置していると、ますます進行して、腱板断裂という状態になると薬物だけでは治らずに外科手術が必要になる場合があります。そこで私どもの施設では、再生医療の手法を用いて、損傷した腱を修復しようとする治療を行っています。自家の血液から抽出したサイトカイン、あるいは他家の幹細胞培養によってできたサイトカインの豊富な上清液を用いて、腱の修復を促します。最近ではプロのスポーツ選手がこの治療を受けたと話題になっているのをご存知の方もいらっしゃるかと思います。手術を回避したいと考えている患者さんはトライしてみる価値はあると思います。

犀星の杜クリニック六本木