ポストバイオティクスという概念があります。腸内細菌の代謝物でヒトにとって有益な働きを持つものの総称です。現在、わかっている腸内細菌代謝物のひとつに、HYA(エイチワイエー)というものがあります。HYAは食事で摂ったサラダ油などに含まれるオメガ6系脂肪酸であるリノール酸が腸内細菌で代謝されることによって産生されます。その働きはオメガ3系脂肪酸であるEPAやDHAと同様で、肥満・糖尿病の予防や改善、抗酸化作用による老化の抑制、腸内フローラの環境改善(善玉菌を増やす)などがあります。通常、乳酸菌から作られるHYAは微量です。工場で乳酸菌と植物油を使って大量生産が可能となってから、サプリメントとして経口摂取し、その働きを最大限享受できるようになったのです。そのほかにも、短鎖脂肪酸自体はポストバイオティクスになります。酢酸は飲用のものがあり、効果は照明されていますが、酸っぱいのが難点です。酪酸は経口摂取しても、ほとんどが胃で分解されてしまいますので、腸内で分解されて酪酸となるトリグリセリドがあります。また、大豆の成分であるイソフラボンからエクオール産生菌により変換されるエクオールは女性ホルモン様作用があり、サプリメントとして開発されています。このように新しい概念であるポストバイオティクスはビフィズス菌や乳酸菌を直接摂らないで、最近の代謝産物を抽出あるいは生成して摂取して、健康を維持、増進していく考えです。これからますます発展していく領域であると思います。当院でも糖尿や脂肪肝などの生活習慣病の患者さんあるいはその予備軍の方々、及び更年期でお悩みの女性の方々にお勧めしています。

犀星の杜クリニック六本木