反面教師
ますます寒くなってきました今日この頃。寒くなってきますといろいろもの思いに耽ってしまうのは私だけでしょうか。寒風にさらされていると、ふと、過去のあることが頭をよぎってきます。研修医の頃、3年目から消化器外科に入局することは決まっていたのですが、臨床をやるか研究をするか進路を決定しなければなりませんでした。当時の医局の体制は、国立大学の教官になるためには専門医を取得するより、博士号が必須条件でした。私は別にそんなことも知らずに指導教官の言うがままに、大学院に進学し研究をすることになりました。大学院を修了した後、当時の教授から「自分で研究費のとれない奴は講師になる資格はない」と言われ、臨床よりも研究でした。講師になってからも臨床の合間に研究を続けなければならず、ほとんど休みなく働き続けました。それでも臨床経験不足は否めず、先輩先生方からの信頼はなかなか得られない毎日でした。唯一、学会発表の場で自分の存在意義を見出すことができ、研究費もある程度獲得できるようになり、医局での立場も安定してきました。それから間もなく、同じ教授が「臨床のできない奴は講師になる資格はない」と言い始めたのです。折しも、手術のできない教授が全国的に増えてきて、批判が高まってきた頃でした。日和見教授だなと思いましたが、何くそっと思い、少しでも多くの患者さんを診て、かつ一人の患者さんをじっくり診るようにしました。そのようにのたまった教授は両方ともできません。でも、そのおかげでかなり医師としての力が付いたと思っています。とても反面教師的な教授で、むしろ見返してやるという気持ちが強くあったので、モチベーションが下がらなかったのでしょう。学生実習の時、「メスの執れる内科医になれ」といった先生です。くやしいけど、今、感謝しています。
犀星の杜クリニック六本木