よくご婦人の方々から、生理前になると便秘になるという相談を受けます。そうかというと、生理が始まると下痢になるので、便秘薬を使ったらいいのかどうかわからないと悩んでおられます。なぜ、便秘と下痢が交互に来るのかメカニズムがわかると、安心しますし対策も立てられます。今回はこのメカニズムをお話します。排卵から生理前は妊娠準備として黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。プロゲステロンは子宮を収縮させないで、妊娠を維持させようという作用がありますが、このホルモンは平滑筋という内臓の筋肉すべてに作用してしまうので、大腸や直腸の平滑筋に対しても収縮抑制し、便秘となってしまうのです。生理直前にこのプロゲステロンの分泌が急激に減少するので、平滑筋は収縮し始め、便通が正常に戻るのですが、生理中はプロスタグランディンという子宮を収縮させて脱落膜を排出させるホルモンの一種が分泌されますので、このプロスタグランディンの作用(粘膜における水や電解質の分泌の促進)により、下痢になります。従って、便秘の改善には、妊娠の可能性を考えますと腸の蠕動を亢進させる便秘薬より、水や電解質の再吸収を阻害する便秘薬、あるいは電解質補充液を飲む方が安心ですね。また、下痢の方はプロスタグランディンの産生をを抑えるために脂肪の多い食事は避け、EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸を多く含む食品(青魚など)を摂ると下痢が収まると考えられます。何でもメカニズムを理解すると、薬に頼らなくても済む一例として参考にしてください。

犀星の杜クリニック六本木