DNA遺伝子修復治療
DNAのメチル化は、エピジェネティクスによって遺伝子の働きが制御されます。 不必要な遺伝子を働かせないようにして、それぞれの細胞をつくり出し、私たちのからだを正常に保つ働きをしています。 しかしながら、DNAのメチル化が異常を起こしますと、それぞれの細胞にとって必要な遺伝子の働きを阻害することや、抑制されなければならない遺伝子を促進してしまう場合が出てきます。 たとえば、がんの細胞を採取するとDNAのメチル化に異常があることが分かっています。がんは、がんを抑制する遺伝子の働きによって防がれているのですが、たとえば、メチル化の異常によってがん抑制遺伝子が働かなくなり、発がんするケースもあります。 このような場合は、エピジェネティクス状態を制御する薬剤によってDNAのメチル化を正常化することができれば、がんを治療することも可能になると考えられているのです。 がん細胞をリプログラミング(初期化)すると癌が治る? 遺伝子変異またはエピジェネティクス異常を修復すれば癌化を正常に戻す事ができると考えられます。 体細胞からiPS細胞へのリプログラミングと同様に癌細胞をリプログラミングすることで正常な細胞に戻すという概念が定着しています。 がん細胞であるマウスメラノーマ細胞をリプログラミングさせたという論文報告があり、他の研究チームからも、培養皿でヒト肝がん幹細胞に抗がん剤など2種類の化学物質を加えると、2日後、85~90%のがん細胞が正常の肝細胞になり、さらに2遺伝子と2種類の化学物質を加えてiPS細胞にリプログラミングさせ、正常な肝細胞に戻すことにも成功したと発表しています。 私どもは、すでにわかっている約2700種類のmiRNAの中で、がん細胞のiPS化を促進するmiR-520dを見出しました。メチル化関連酵素であるHAT1やKAT8の阻害作用を有する低分子化合物がこのmiR-520dの働きを高めることが判明しました。さらにこれらの化合物はがん抑制遺伝子であるp53遺伝子をアップレギュレートして、がんのアポトーシスを誘導することも認められています。当院ではこれらの化合物を投与して、がん細胞の脱メチル化とリプログラミングによるがん治療を提案しております。いくつかの臨床例ではがんに対する有効性が示唆されており、重篤な有害事象も報告されておりません。 このように遺伝子や化学物質を与えて細胞を正常に戻すリプログラミング療法は、がんや糖尿病の治療につながると期待されています。副作用がなく、難病も根治できる治療になるとして、大手製薬会社も開発に力を入れつつあると報道されています。 ただ問題点として、がん細胞が正常細胞にリプログラミングされたとしても、実際にがん治療を実現させるためには、培養皿中ではく、生体中のがん細胞を100%の効率で正常細胞へリプログラミングする必要があります。一般的に、画像検査で発見される早期がんでも1億個のがん細胞からなると考えられています。仮に99.9%の効率でがん細胞を正常細胞へリプログラミングできたとしても、10万個のがん細胞から再発することになるため、根治という観点からすると不十分であると言えます。 そこで、犀星の杜クリニック六本木ではこれらの低分子化合物を用いて、がん免疫療法が有効に作用するレベルである1000分の一までがんを縮小させ、残存したがん細胞をNK細胞療法やマクロファージ活性化療法などを併用してがんを治療する犀星の杜がん治療法を考案しました。特に進行した悪性度の高い未分化や低分化がんに威力を発揮することが期待されています。がん治療のセカンドオピニオンとしても活用していただけます。
2026.03.11
